真鶴半島ハイキング2017-12-10

■晴
 真鶴半島の森歩き、約3時間のハイキングでした。
 半島の先端一帯に保存されている森林は原生林ではなく、江戸時代に植えられた人工林(クロマツ林)が元だそうです。現在はそれが交替して照葉樹林に移っていく途中ということらしいです。狭い範囲ではありますが、森林の迫力は屋久島で感じた以来と思いました。こんなのが車で1時間の場所にあるなんて。
ガイド本:『日本の森100』(山と溪谷社、2014)

森をめぐる道
           〔森をめぐる遊歩道〕
南端の三ツ石海岸
           〔南端の三ツ石海岸、干潮時には三ツ石へ行ける〕
ジオパークのガイド
           〔ジオパークのガイド〕

貴乃花の孤立2017-12-30

■雪(秋田にて)
 相撲協会の問題が一応決着した。最後まで残っていた貴乃花親方の処分内容がほぼ決定した。加害者である日馬富士関の親方と同一の2階級降格処分、加害者に何らかの形で加担したと疑われる白鵬関、鶴竜関よりも重い処分だった。そして、被害者である貴ノ岩関に関しては処分ではないが、番付で13階級降格、初場所全休の場合でも「特別に配慮して」十両最下位に留めるという。
 こうして書き並べてみると、現相撲協会の暴力事件に対する裁定がいかに加害者寄りであり、事態を軽く扱おうとしているかがわかる。暴力事件というよりも、力士同士の“けんか”ととらえ“けんか両成敗”の処置を行い、被害者側の処分を重くすることによって白鵬関に最大限の配慮を示した。
 貴乃花親方の頑なな態度の意図は相撲協会には全く通じていない。協会理事の諸氏は貴乃花親方の態度に一時うろたえたようなそぶりを見せたところもあるが、結局は彼らの予定調和の裁定を下した。つまり、彼ら自身と相撲協会を守り抜いたのである。
 処分は貴乃花親方を除き満場一致だったそうだ。一時、貴乃花の「あなた方は信用できない」が極端な言葉として報じられたが、理事全員が貴乃花の処分を肯定したことで、貴乃花の言葉は少しも極端ではなかったことが証明された。私は、貴乃花はウソを言う人ではない、沈黙するのはウソを言えない性格ゆえだろうと合点する気持だった。
 それにしても満場一致には驚いた。異論は1つも出ないものか。現在の相撲協会理事会は、反対意見や少数意見を胸を張って言える場所ではない。横審、評議員会と権力の網がめぐらされた中で、反対意見、少数意見は排除されるのに違いない。その中で、貴乃花親方は自分の弟子が受けた被害に対して、加害者に正当な裁きを受けさせるために、あれほど孤立して悲壮な態度をとらなくてはならなかった。自分の所属する相撲協会にゆだねてはならず、何よりも警察に通報しなくてはならなかった。そうすることは、貴ノ岩と貴乃花親方の権利を守ることであると同時に、日本大相撲を正しい方向に向かせることであると信じられた。
 貴乃花の難解な「理念」がマスコミに紹介され、事件と関連付けられたりするのだが、今回の事件は単純な暴力事件、モンゴル力士界で行われてきたであろうパワーハラスメントが告発されただけで、理念とか難しいものではない。むしろ、一般常識から離れて難解になっているのが、相撲協会の権力構図なのではないだろうか。現状の権力関係や利害関係を維持するために彼らは弱いものを排除しようとしている。ただただ白鵬関を中核として作り上げられてきた現状を守りたいだけなのだ。

トムラウシ遭難、ついに書類送検2017-12-31

■曇、晴れ間あり(秋田にて)
 2009年7月に起きたトムラウシ遭難は、悪天候の中、予定通りの登山を強行したツアー登山グループが遭難し、ツアー客7人、ガイド1人が死亡しました。夏山シーズン中に起きた遭難事例としては最大規模の一つとされています。また、登山史上「中高年登山ブーム」(1980年代後半~2000年代半ば)の時代に起こった最悪の遭難でもありました。
 2017年12月27日、北海道警察が、この遭難の男性ガイド3人(1人は死亡)と、ツアーを企画した旅行会社アミューズトラベルの社長(当時)の計4人を、業務上過失致死傷の疑いで書類送検したというニュースが飛び込んできました。事故発生から8年後、公訴時効(10年)まで2年を切っての書類送検でした。
 トムラウシ遭難は非常に衝撃的なものでした。ガイドの責任も当然ではありますが、無謀な登山を強いる原因となったのは、旅行会社と雇用されるガイドとの力関係なのだと、多くの人は感じていました。しかし、それを発言することは難しかったのです。なぜなら、旅行会社と遭難事故の関係を立証することは一般人には難しく、根拠の明確でない発言は名誉棄損で訴えられる可能性があります。旅行会社側からは一切の関連情報は公開されていませんでした。
 事故後、検証委員会がつくられ、調査報告書(中間・最終)が発表されました。この検証委員会は日本山岳ガイド協会が設置し「事故関係者とは利害関係のない第三者で構成した特別委員会」としています。しかし、国や地方自治体が設置する公的な第三者委員会ではありません。また、ガイド協会は引率責任者であったガイドの所属団体であり、委員は全員登山界の著名人でした。登山分野以外での有識者(たとえば法律分野、地元自治体、救助関係者のように)が含まれない意味では、本当に客観的な調査が可能かどうか疑問がありました。報告書は多くの事実や課題を明らかにしましたが、アミューズトラベルに対する調査が行われたかどうかは確認できませんでした。本報告書は、遭難発生と旅行会社との関係が十分には解明できていないと私は思いました。
 予想されたように、報告書発表を境にトムラウシ遭難への社会的な関心は一段落し“騒ぎ”は鎮まってゆくことになりました。報告書を作成した委員の中には信頼の厚い登山界の識者が名を連ねていました。その報告書をベースにした書籍も刊行され、だれでも読むことができます。すべてが一段落して遭難は過去のものになりつつあると思われました。
 しかし、トムラウシ遭難は何も解決されていないと、私は考えていました。
 リーダーガイドは遭難時に死亡、自身も低体温症となったサブガイドは雑誌にインタビュー記事を公表し、自分はツアーを手伝っただけで責任はないと主張しました。もう1人の一番若い地元ガイドは、精神に変調をきたして捜査不可能との噂が聞こえていました。そのような中で、トムラウシ事故の翌年、アミューズトラベルは中国・万里の長城ツアーで再び死亡事故を起こして、その後解散してしまいました。
 このまま終わるしかないのか……と、ほぼ諦めていたのが正直なところでした。
 2018年は特別な年になりそうな気がする、そういう年の暮れになりました。