那須雪崩事故のまとめと教訓-3 ― 2018-03-04
■快晴
《那須雪崩事故発生までの気象状況》
ここからの話は、検証委員会とは別に雪崩事故の調査・分析を進めてきた研究グループの発表内容に基づくものです。この研究グループは、国立研究開発法人・防災科学技術研究所(防災科研)、気象庁気象研究所など11機関31人の研究者が参加しており、代表者は防災科研の上石勲さんでした。
那須雪崩事故の表層雪崩発生に至る気象は、本州南岸を発達中の低気圧が通過して、27日未明から集中的な降雪をもたらしたものでした。アメダス那須高原のデータを見ると、27日1時から積雪が増え始め、約10時間後の11時に積雪34㎝になっています。1時間の降雪量で見ると、3時台に8㎝、6時台に6㎝というように、短時間で顕著な大雪となりました。山麓では前日まで雪が完全に消えて春真っ盛りでしたが、一夜にして30㎝超の積雪で、真冬に逆戻りという状況でした。
このような大雪は、地形の影響により局地的に起こっていたことが、気象庁気象研究所の荒木健太郎さんにより発表されています。那須の場合ですと、南東にある低気圧から流れ込んだ暖湿流(水蒸気)が那須岳の東面に当たり、斜面を上昇して下層に雲ができた所へ上空から雪が降ってくると、そこで雪が成長するそうです。この時、雪に過冷却の液体の雲粒がくっついて、雲粒付着の雪の結晶が形成されます。
この時の南岸低気圧は、最初は前線を伴う低気圧1つでしたが、その後東側にもう1つ前線のない低気圧が発生しました。第2の低気圧は那須岳に近く、暖湿流(水蒸気)が強まるとともに長時間持続しました。荒木さんはシミュレーション実験を行って、那須岳を中心とした地域の総降水量を調べました(下図)。結果は那須岳山頂付近の東側に降雪が集中しており、今回の事故現場やアメダス那須高原もその中に含まれます。
[降雪は頂上付近東側へ集中]
このように、南岸低気圧に伴って全体的に降雪が多かったのではなくて、那須岳北東側などで降雪が集中していたことがわかりました。このことは、一般的な天気予報に注意するだけでは予測が難しかった可能性があります。また、降雪集中の現象は那須岳以外に南会津、尾瀬、日光などでも起こっていたことが、アメダスのデータからわかります。
次に、荒木さんは過去の気象データを使って、今回の大雪がどれぐらいの頻度で起こってきたかを調べました。結論は、3月に起こる気象現象としては約19年に1度となり、かなり稀な現象であったと言えます。しかし、3月以外も含めシーズンを通して見ると、約3シーズンに1度の割合で今回のような大雪が起こっていることがわかりました。
那須の雪崩事故を引き起こした南岸低気圧通過時の大雪は、3シーズンに1度ぐらい起こっており、それほど珍しいものではなかったのです。
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